こんにちはー。
報道されてから随分と日が開いてしまいましたが、今回は某大手メーカーの自主回収について思うところをつらつらと書いていこうと思います。
エタノール配合のハンドジェル(化粧品)のパッケージ表示に対し東京都から指摘が入り、何度かやりとりがあった後に自主回収に至ったというもの。
この件に関しては、正直「ついにきたか…」という感じですね。報道があってから何件か問い合わせを受けたのですが、業界的にも結構な影響があったんだなぁとしみじみと思いました。
なぜ行政から指摘を受けたの?
ハンドジェルのパッケージに記載されていた「手肌を清潔に」という表示に対し、「洗い流さないタイプの化粧品の効能効果表示において、消費者に誤解を招く恐れがある」と指摘を受けたようです。
東京都の言い分としては、化粧品で標ぼうが認められている「(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする」効果は、洗い流しや拭き取りなど物理的に汚れを落とすものに限られるから、それがわかるように書いていないのは不適切!ということみたいですね。
確かにおっしゃる通りですねーという感じではあるんですが、化粧品の定義にはこのように書かれているので、頭ごなしに不適切ってこともないだろうとも思うんです。
「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものを言う。
引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
メーカー側も指摘を受けた際に、この点を伝えたうえで何度か東京都とやり取りをしたみたいなのですが、最終的に自主回収と判断したようです。
このあたりについては、メーカーと東京都に取材した記事があったので、リンクを貼っておきますね。
今までの業界内の温度感
今回の事例が起きるまでは、洗い流しや拭き取り使用を明記していない化粧品アイテムで「清潔」をうたうのは、厳密には完全ホワイトなやり方ではないかもしれないけど、業界的には過剰な表現をしていなければまぁまぁという感じだったと思うんですね。
ただ、行政サイドからすれば「良いとはいえない」となるのは明らかで、私個人も定期的にヒアリングしている中で「今は表立って指導はしていないけれど、良いものではない」という雰囲気はビシビシ感じていました。
なので、いつかは指導を行うだろうなーと様子見をしていたところ報道が流れてきたので、びっくり!というよりも「ついにきたか」という心持ちでした。
なんでこのタイミング?
比較的長い期間、指導が入りそうだけど動きがない状態が続いていたのですが、あえてこのタイミングで実施されたのは、おそらくコロナ禍が影響しているんじゃないかなと思います。
エタノール配合のハンドジェルって、一般の小売店に流通するのは指定医薬部外品か化粧品のどちらかになりますが、化粧品は菌やウイルスへの効果をうたえません。
なので、化粧品のパッケージや広告の中で、薬理作用による消毒効果を期待させてしまうような表現をしてしまうと、感染症対策として使える!と誤認させてしまう可能性があるので、ここらでいっちょ指導をしましょうと判断したのかなーと推測しています。
今後はどうなる?
今回明確にNGラインの線引きがされたので、化粧品広告で「清潔」を使用する際は、洗い流しor拭き取りによるものと明確にわかるような表現が業界ルールとして根付いていくと思われます。
もしかしたら日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン」の次回改訂の際に、注意事項として盛り込まれる可能性もあるかも。
個人的には今回の指導は「厳しい…」といまだに思っています。
パッケージや広告で消毒を暗示するような表現をガンガンやっていれば話は別ですが、パッケージの裏面に一文記載していただけで26万個近くもの商品回収は企業にとってさすがに打撃がでかすぎるのでは。
「ガンが治る!」とか「シミが吹っ飛ぶ!」系のトンデモワードは、たった一文でも即アウトですけど、今回のは化粧品の定義にも含まれている文言ですし、悪質な表現だったとは言えないと思うんですよね。
今回指導があったのは化粧品でしたが、雑貨のどメジャーな除菌系商品でも長年グレーだけど指導が入っていないゾーンはあるので、これらに対する指導強化が進むのかが気になっていますー。
ではではまたー。
Photo by Giulia May on Unsplash